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1.はじめに
金平糖(金米糖とも書く)は、その「角」がとても印象的な、誰でも知っている砂糖菓子である。元々は16世紀頃にポルトガルの宣教師によって日本に伝えられた砂糖菓子に、この国でさらに改良が加えられて、我々の知る「かたち」に発展したものらしい。21世紀の現在でも比較的簡単に入手できるし、新聞などを見ると皇室の贈答品としても使われているようで、代表的な和菓子であることは言うまでもない。金平糖の歴史やその特徴ある形への興味については、寺田寅彦の随筆[1]や福島のパイオニア的な研究[2]がよく知られているし、その後にもすぐれた著述があるので、ここではいくつかの文献を挙げるにとどめたい[3-8]。
すでにご存じの読者も多いとは思うが、まずここで一般的な金平糖の製法を復習しておこう。
- ドラと呼ばれる大きな中華鍋を傾け、中心軸の周りにゆっくりと回転させる。さらに、鍋の底からバーナーで全体を加熱する。
- ゴマやケシの実、あるいは小さなザラメの粒子をたくさん鍋の中に入れ、加熱しながら鍋の回転によって攪拌する。
- から飽和濃度に近いショ糖溶液(糖蜜)を加え、粒の表面でゆっくりと結晶化させる。販売されている金平糖には、ハッカや抹茶などのエキスが加えてあるものも多い。
- 成長のあいだ、粒子は鍋の回転とともにザーザーと音を立て、「なだれ」を起こしながら混ざり合う。職人はその音から、出来の善し悪しを判断できるそうである。糖蜜から水分が失われ表面が乾く頃合いを見計らって、糖蜜を補給する操作を繰り返すうちに、やがて表面に角が生え始め、数十時間の後には、立派な角が生えた金平糖が出来上がる(図1)。角の本数は、文献によっても異なるが、十数本から30本程度の場合が多いようである。

経過後の試料。図中の1目盛りは1mm。
菓子工場では、径が1m以上もある大きな鍋が使われているが、小規模な装置であっても角を生やすことができるようで、例えば、エバポレーターのフラスコ中に小さな粒子を入れ、回転させながらショ糖液を滴下しても、金平糖の成長が観察されたという記事を以前にWEB上で見かけたことがある(残念ながら執筆時点でそのサイトを見つけることができなかった)。